2012年4月9日

焦点のない美―古代オリエントの図象


最近、古代エジプトやメソポタミアあるいはシリア・パレスチナの美術を
とても美しいと感じます。いわゆる典型的な「キリスト教美術」よりも、
個人的には好きだと感じます。

たとえば古代の壁画には、絵の歴史に詳しい方には当たり前なのかもしれませんが、
遠近法的・実体画法的な見方が欠けています。

実はこれまで、古代のレヴァント地方の絵などを見ても、それを不自然としか
感じないような自分がいました。

それだけ、わたし自身が西洋絵画の視点を見につけていた(?)のでしょうか。

しかし、違和感のあった図象を、好きになるまで見続ける。そうして、もじどおり、
「見方」が変わったとき、これは、自分の中での革命です。
それをきっかけに、宗教観や、歴史の見方まで影響することに、驚くほどです。

古代エジプト、メソポタミア、シリア、パレスチナなどにあった図象の美、
それは、焦点のない美です。
単純に言い過ぎかもしれませんが、大事なものは大きく書いて、
そうでなければ小さく書く。

そこにある距離感は、とうぜん見たままと違います。
古代の芸術家の図象はもちろん、計算し尽くされた美の伝統に従ってそれを
書き、刻み、残したわけですが、どういうわけか、わたしの娘の目に入れても
痛くないと思うような愛らしい絵と共通点を感じることもあります。

その奥深さ、身近さを、わたしは今、小さな印章から、巨大な建築物にまで
観察して楽しんでいます。

聖書学の分野でも、オトマー・ケール先生の働きなどをひとつの画期として、
今、いよいよ図象研究が盛んです。(ケール著書の一冊、数年前日本語にも
なりましたね。)

たとえばチューリヒ大学等の以下のプロジェクト、関心がある方へは是非
お勧めです。

http://www.religionswissenschaft.uzh.ch/idd/index.php







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