2011年11月23日

母教会80周年によせて。

以下は、わたしがかつて働いていた教会の80周年をお祝いするために
記念誌に寄せて、先日認めた手紙です。

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確に理解するほどに、驚きも大きい」

80周年おめでとうございます。

この機会に、私は、A・ブレンデルという人が音楽家としての人生で学びとった上の言葉を
通して、K教会・T集会所伝道師として神と人とに仕えた日々を思い起しています。
思えばあの日々、この言葉は、二つの文脈で私の実感でした:

・ 第一に、礼拝・祈祷会の準備と実際から知った、神との格闘と憩いの文脈。
・ 第二に、みなさまとの出会いと交わり、小会での対話と協議、あるいは開拓伝道の
具体的な歩みの中で知った、人との間の緊張と信頼の文脈。

かの有名なピアニストがどのような意味でこう語ったかはここでは触れられません。
が、私にとっての意味を申し上げるならばこうです;「正確に理解する」とは、人格に直接
触れるような、イキイキとした出会いに基づく知、把握のこと。「驚き」とは、二重の意味で、
つまり、「つまづき」と「ときめき」の両面を伴って心と肝と魂を満たす思いのこと・・。

そうです、今思えば、私は、主を知れば知るほど、そして、みなさんを知れば知るほど、
躓いたり、ときめいたり、なんだか人間らしい自分であったのです。
具体的な事例はここで申し上げる必要はないでしょう。ただ、加えて申し上げたいことは、
私がその歩みの中で、結局「自分」という存在を知って、知るほどに「はっ」と驚く経験を
していたということです。

あの日々に知った、自分のあまりに大きな欠けや弱さも、
あの日々に持った、自分はこの言葉に立つのだという希望や確信も、
さらに「正確な理解」を求めるよう私の生涯を方向づけました。
そして今、その延長で、私は神と人とのイキイキとした触れあいを求めてスイスにおり、
聖書を読み、新鮮な躓き・ときめきの連続の只中で生活をしているのです。

K教会・T集会所での生きた三年間と、今に至る方向づけを与えてくださった
主なる神さまに心から感謝いたします。
そして、忍耐と希望を共有し、その道を一緒に過ごしてくださったみなさま、
離れてもなお祈りと支えをもって共に歩んでいてくださっているみなさまに
心から感謝をいたします。
私もK教会のこれからのいっそうイキイキとした歩みに、主がいつも共にいて
生きて働いてくださるよう、ご一緒に祈って参ります。


「わたしは息をしている。これこそ神を讃える十分な根拠だ。」

これは、私が属するチューリヒの教会合唱団のメンバーで、引退牧師にして
実践神学者であられるS先生が、詩編に関する著書の中で書いておられた
言葉です。私はこれを、スイスでの研究生活・信仰生活のふとした時々に
思い起します。

例えば、礼拝での静けき祈り・麗しき讃美の機会に思い出すほかは、
特に学びの途上で走り疲れたと感じ「はぁはぁ」と息切らせ立ちどまるときに。
自分たちや隣人の困難に「ふぅ」と深いため息をつくときに。
あるいは何かにいら立ち「あふあふ」と鼻息を荒くしてしまった直後の苦々しい
ひとときに・・・(ところで、ヘブライ語で鼻はアフと言いますが、
これは怒りという意味もあります。なるほど)。

そんな折々に、この言葉はしばしば私を導いて、新しい一週間を積極的に
始めさせ、新鮮な一歩を元気に踏み出させてくれます。

それは、創世記二章六節で主なる神がアダムを「生きる者」とするために
その鼻に吹きかけた「命の息」のイメージと相伴って、
創造主なる神さまに心を向けさせてくれる言葉です。
また、新しい言葉の力を湧き起こす御霊が風のように吹きつけて
イエスの弟子たちを満たした聖霊降臨のイメージに似て、
魂=息を吹き返すために何が必要かを思い出させてくれる言葉です。

イキイキとした生を求める歩みの中出会ったこの大切な言葉を、今、ここに、
一つの画期を迎えておられる貴教会にお贈りさせていただきたく存じます。
貴教会が、いよいよ新しい命の御言に息づき神の栄光を讃える主の群れとして、
与えられた伝道地で、与えられた工程を、
呼吸も新たに歩み抜いてゆかれることを願いつつ。

どうか、みなさま、これまでもそうであったように、主の十字架と復活の、
驚きに満ちた福音の命に生きる教会とその肢体なる一人一人として、
息弾む歩みを続けてください。
祈りを忘れず、歌を忘れず、主の栄光を表す群れとして、
夕に朝に御言に生き、神と人とにお仕えください。

→「キリストの言葉があなたがたのうちに豊かに宿るようにしなさい。
知恵を尽くして互いに教え、諭し合い、詩編と讃歌と霊的な歌により、
感謝して心から神をほめたたえなさい。」コロサイ3:16

妻がみなさまによろしくと言っています。
東京生れの教会の娘も今年十一月には四歳です。
スイスでまた新たな空気を吸って、成長のよい機会を与えられています。
再会の、成長に驚いていただく日が楽しみです。

1 件のコメント:

schu-hey さんのコメント...

追記)
なお、K教会同様、音楽家のブレンデル氏も、
今年80歳の誕生日を迎えられたとのことでした。